ジメジメです!

冷たい風吹きすさぶ土日を越えたら、沖縄人が口を揃えて宣言したとおり、ジメジメ大王の襲来。晴天続きでサラっと心地よい「うりずん」の時期は足早に終了。残念でしょうがない。

しかし我が家には、ジメジメランド・逗子在住時に購入した、巨大な除湿機(しかも2台)が君臨しており、いい仕事をするので家の中はひんやり快適。

さてそんな感じでもう梅雨入りに怯える時期ですけれども、今回はまだ沖縄がうすら寒く、曇天続きだった冬の旅の話をいたします。前回の栄町の忘れがたい一夜よりももっと前の話です。自由人に自由にやらせるとこういうことになる。

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沖縄が常夏で、青い空青い海をたたえていると思っているナイチャー(本土人)は多い。大きな間違いである。

曇天日の多さは全国で1位。
特に冬、12月から2月頃までは毎日曇って雨も多くて、きっと安いからという理由でこの時期に来てしまう観光客は、己の無知と自然の融通のきかなさを呪いながら帰路につくのであろう。

そう、しかるべき時期にしかるべき場所に人間が押し寄せるのは、それだけの理由がある。

しかし!!!

朝から青空、天気予報も一応、久しぶりの晴れ一色、そんな1日が訪れたのである。1月中旬、冬のさなかに。

これは青い海が見られるのではないか!
どうしよっかな〜遠いしな〜と二の足踏んでた、やんばるアートフェスティバル、という目的も無くはない。

Y!さんに聞くと、40分後に家出れば、うまいことこのフェス会場の小学校まで乗り継ぎがスムーズにいけるとのこと。スムーズつったって2時間半だけど。田舎の乗り継ぎは失敗すると最悪、辿り着けないこともあるから、この心強い情報に背中を押されて勢いで家を出た。

すんでのところでゆいレール乗り損ねて、バスターミナルまでダッシュ。
そんなゼーハーしているちびろっくを、やってきた高速バスはしれっと乗っけてくれる。

一般道も高速もスイスイ。平日万歳!

 

ボケーとしてるともうすぐ、乗り継ぎの名護バスターミナル。

 

あえー

今までわざわざ、あえー海が見たいとタイとかメキシコとか行ってたのに、自宅からバスでちょこっと来ちゃえばこんなんだよ。なんて所に住んでるんだわたしったら。

観光客わんさかの、なんとかビーチみたいな名前がついているようなとこでなくとも、この海岸線にしばしば見られるちょこっと砂浜みたいなスペースでゴロゴロできれば、幸せだと思う。覚えておこう。

 

海岸線からちょい離れると、間もなく乗り換えの名護バスターミナル。
一旦ここでオキカ(Suica沖縄版)をチャージして、あ、チャージしたら現金ないからATMでおろして、あと軽くお昼ごはんでも買うか。と、着いたそこは

 

広い。

オンボロ…時代を感じる建物が一筋真っ直ぐに伸びる、だだっ広いその名護バスターミナルは、これまで立ち寄ったどのタイのバスターミナルより質素。

ATMという最新鋭の機械なんて、探さなくたってあるわけないとひと目で分かるこのビジュアル。ATMというものが生まれる前からこのバスターミナルは変わっていないのだと思う。

きっぷ売り場?や、売店?を横目に、とりあえず端っこにあるトイレに向かう途中、

 

本当に嫌なんだろうな

たぶんね、この規模だったら、本人に直接言った方が早いと思う。貼り紙作るより。たぶんね、そんなに不特定多数の人が雑巾洗ってるわけじゃないと思う。

建物のドアは大体閉まっているので、中の様子が伺えないが、思い切って「売店」の扉を開けて見ると、縦に細く長く通路があり、右手にお菓子やらパンやら質素なお弁当やらが積み上げられている。これもまた、発展途上国によく見られるタイプの商店である。

どれも食べたくなるビジュアルじゃないが、ラス1だったポーク玉子おにぎり¥150をゲット。さてチャージをしなければ…。

売店の手前に、オキカ買えますと貼り紙がしてある部屋がある。これも勇気を出して入ってみると、右手にカウンター。どう見てもICカードなんてナウいものに対応してなさそうだが、思い切ってチャージできるか聞いてみると、できるとのこと。4,000円入れてもらい、5分ほどの空白の時間を経て、おねえさんはいかにも家庭用プリンターから出しました的な、大きな領収書をくれた。

そして財布には3,000円。交通費とおにぎりを確保した以上、何に使う予定もないが、クレジットカードやEdyが通用しない田舎では心細い。バスターミナルの向こうに見えたファミマへ小走りで往復、無事現金を入手して一安心。そして丁度バスが来たので乗り込む。

 

ギシギシ言ってる

日本の田舎のバスって、どこもこんななの?どこもこんなに東南アジアクラスなの?オキカのピッてやる機械以外、全部30年くらい前から時間止まってますよ?

そんな風にして旅気分がじわじわきたところで、先程のポーク玉子をあける。

 

沖縄人のソウルフード

すぐ目の前の貼り紙には、「飲食禁止!」と強く記載されているが、この椅子に座っているおばちゃんが早速ミカンを食べているので、良し。タンパク質と炭水化物を十分に補給。

 

名護市は市長選挙をもうすぐ迎えるところ。変な名前の候補者のポスターをみながら、

 

不安になるバスの本数

着いた、アートフェスティバルの会場の学校跡地にほど近いバス停。

勿論周囲には人っ子一人いない。まあいい、学校に向かう。

 

海外

考えてみれば当たり前だが、東京よりも台湾が近いこの土地では、植物が全く違う。普通の人んちの庭に、こんな東南アジア的野性味あふれる何かが、当たり前に生えている。しかも食べられそうな感じが良い。

 

そのままでよかったのに

リニューアル(したつもりだけど過去バレバレの)石敢當を眺めつつ、学校への道をゆく。ほんとうに誰もいない。

 

いい天気

見えてきた、フェスティバルのものらしいのぼりが立っている学校。
なんだか、思い立ってちょっと来ちゃった所がこんな現実離れしている風景なので、自分でもちょっと面食らっている。こういう印象は、パスポートを持って飛行機に乗ってから、やってくるものであろう普通。

手前の駐車場で、のんびりしてそうなおじさんに話しかけられた。

「学校…に行くの?」

「はい、そうです」

「学校…今日は閉まっているよ。今の時期、イベントは土日しかやっていないんです…。」

雷に打たれたような衝撃。
あんなに走って、バスに揺られて、また走って、ドキドキしながらオキカにチャージして、ここまで来てイベントやってないとか。
(後からよ〜〜〜〜くイベントのサイトを見たら、1月8日以降は土日のみの開催と記載あり。完全に見落とした。)

すみませんねえ………

と、本当に申し訳なさそうに、全然イベントには関係なさそうなおじさんが謝ってくれるので、どうにも恐縮して、「あっ、こちらこそすみません!!大丈夫です、海見て帰ります!!!」

と言ったとおり、しばらく閉じた門から校舎を眺めたのち

 

ほんとだ赤文字で書いてある

しばし誰もいない、学校を取り囲む海を見てぼーとする。こんな面白そうなところで育った子供ってどんななんだろう。とか、考えて、

はっ。今、案外幸せである。

と我に返る。そうか、ただどっか静かな所で海が見たかっただけで、イベントは後付けの理由だったのだ。と、都合の良い思い込みなのか腹の底からの想いなのか微妙だけど案外幸せなのは確かなので、まあ、いっか、と開き直る。

ただ、こんな僻地までせっかく来たのだから、どっかそれっぽいところに行きたい。

しかしここは本当にただの田舎町なので、あるものといえば海と道の駅。よし、両方行こう。

 

次のバスを1時間も待つのもばからしいので、道の駅がある北方面へとりあえず歩く。人っ子一人いない。

 

この58号線を6時間、前を向いて歩くと辺戸岬

ここを真っ直ぐ真っ直ぐいけば、いつかは辺戸岬に着くのか。沖縄本島最北端の場所。いつか行ってみたい。が、それは今日ではない。それくらいの理性はある。

 

中国人もさすがにいないよ

学校などを横目に20分ほど歩いても、誰一人歩いていない。理由はかんたん、歩く理由がないからである。時折、通り過ぎる車の運転手が、心配そうにこちらを見ているのもわかる。迷ったのか置いてかれたのかと考えあぐねているのがわかる。だって他に歩く理由なんてないから。

特に後悔もしていないが、もうちょっと道沿いで海が見えると思ってたので、そこは少々残念。

 

一応ここにも恵方巻きはある

向こうが霞んで見えないほど広大な駐車場を有するローソンで水を買う。この気の抜けた看板で、一応はるばる、「やんばる」というなんだか特別な場所に来たのだとう実感がわく。徒歩だと特に。

 

沖縄のひとはカラオケ大好き

おにぎりしか食べてないので、小腹が空いたがカフェなどというものは勿論、皆無。ここにそんなものを出すなぞ自殺行為だ。ようやく見当たったのは、もちろんまだオープンしていない、もしかしたらすでに廃墟化しているかもしれないカラオケスナック。

こちらを不思議そうに眺めながら高速で通り過ぎるチャリダー。別に迷ってなんかないよ。道の駅に行くんだい。

 

もうすぐだね

左っかしが海っぽくなってきたので、道を渡ってみる。と、目的地らしきものが見えてきた。久々に人の影も。

 

40分歩いた

さて着いたそこは…………

これまで行ったどの道の駅よりも、台南郊外のさびれたスーパーよりも、とってもさびれていた。

おばちゃんが2人、おしゃべりしながら楽しそうに働いている。が、時間が遅い&オフシーズンということもあり、棚にはわずかな品。シークワーサーと蕎麦(ふつうの日本蕎麦)がここの名産のようだが、今は特に興味がない。最近沖縄のそこかしこでイチオシの、モリンガのお茶を買う。お腹が空いたが2階のレストランで名物のお蕎麦を食べるほどでもない。しかしこの売店には、今食べられるものは袋入りのサーターアンダギーしかない。量が多すぎる手作りぽいのと、量は少なめだが工場生産ぽいやつとで悩み、少なめの方を選択し、そして後悔した。

 

2階の、海がちょこっと見える食堂兼カフェで珈琲を飲む。
近所で働いているらしいご婦人2人がお蕎麦を注文し、一人がもう一人に食べ方をレクチャーしていた。沖縄ではこの「お蕎麦」は舶来品。我々が韓国冷麺や、ベトナムのブンチャーを「へえ〜これがねえ」と珍しがって食べるのと同じ感覚なのだ。しかしこんなところで、蕎麦の実がとれるとは。ひとりでこっそりとカルチャーギャップを感じる、静かな午後。

 

沖縄そばは、当たり前にあるよ

バスの時間が近づいてきたので、店を出て向かいの海へ。

 

ちょっと荒々しいビーチ

勿論青い。が、名護の方が青かった気もしなくもない。まあいい、誰もいない。独り占め。記念撮影。

 

十分、満足です

しばらく一人でキャッキャして、バス停へ。

田舎だと、本当にこんな所にバスが来るのかといつも不安になるが、案外普通に来るので今回もそれを期待して待つ。

 

本土にはあまり伝わらない現実

本土ではなんとなく、義務で一応、程度にしか報道されない事柄も、沖縄に来るとその深刻さがよくわかる。最近の米軍の落とし物関連も基地建設も、住んでる人間からしたら日々の生活に関わること。だから毎日トップニュースにあがるのは当たり前。テレビもネットも新聞も全国に全国のニュースを伝えるが、その限界を肌で感じる日々。

ちびろっくは所詮何も知らない新入りだが、それでもくそばかでかい基地を目の当たりにすると、なんだかムカムカしてくる。そのもの自体にもムカムカするが、この島を捨て石にする日本政府にも。わたしは、沖縄がすきなのだ。だからちゃんと歴史と現状を知ろうと思う。そう簡単なことではないけれども。

と、ムカムカしていると、バスがやっぱりほぼ時間どおりに来た。青い海をチラと最後に一瞥して、バスに乗り込み、もう二度と来ることはないであろう、道の駅おおぎみを後にする。

バスは本土から譲り受けたらしきものを、沖縄仕様にカスタマイズしていた。沖縄のバスの出入り口はひとつだけ。

 

東南アジア的カスタマイズ

家を出た時に想像したのとは、全く違う1日になったけども、この思いどおりに行かない感じで「あ〜旅に出た〜」と満たされる。一体なぜこんな変な子に育ったのか。まあいい、今日は旅をしたのだ、ご希望どおり。

しかるべき時期にしかるべき場所に人間が押し寄せるのは、それだけの理由がある。

逆に言うと

しかるべきでない時期にしかるべきでない場所に人間が押し寄せないのは、それだけの理由がある。

身をもって納得した1日であったが、それでもちびろっくは後者を選ぶ。

 

帰りに名護バスターミナルで、「お食事処 がじまる」という食堂の扉を、意を決して開けてみるとそこは、ちょっと広い目の、雑多に物が積み上げられた、おばあちゃん家の台所であった。奥の方のテーブルに僅かに残るお惣菜などのパックの中から、薄い100円のサンドイッチを取り、のんびりとレジ奥に入った商売っけゼロのおばちゃんに代金を手渡す。レジ横には、「ご自由にどうぞ」と切られたりんごが空気に晒されスッカリ茶色くなっている。本気でおばあちゃん家じゃないか…。

 

そして次なる楽しみのための情報を入手。

 

色々と突っ込みどころが多い

マグロまるごと1本も、ヤギ1頭も、いずれもちびろっくには手に余る超豪華賞品である。トドマンと連れ立って行ったが、久々の生魚を美味しくいただき、鉢植えをいくつか買い、抽選の時間まであと1時間もあるかねと言いながらそのまま帰ってきた。

<後日談>
マグロは当選者の要望でその場で解体してもらい、美味しいところだけ持ち帰ったとのこと。
ヤギは想像を上回る大人気で、当てる気まんまんで軽トラで乗り付けた人もいたらしい。当選者は狂喜乱舞だったとか………そのヤギはペットなの?それとも?

次回の糸満フェスではそんなエキサイティングな抽選会を体験し、ご報告いたします。きっと。

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