Bachoは実によく喋る。

今日は、まる1日かけてKakheti(カヘティ)州にある彼の実家で、ジョージア独特の古代製法でつくるワインを飲んだり、彼の家族と一緒にご飯食べたりする日である。彼はCouchsurfingで、「色々助けになるぜ!」とオファーをくれた大勢のジョージア人のうちのひとり。昔ながらのワイン飲める所行きたいぜ!とアドバイスを求めると、「うちで作ってるから来たらいいぜ!」てな流れで、お邪魔することになったのである。

 1. ジョージア人は客人を神の使いとみなして大切にもてなす
 2. だいたいどこの家でもワイン作ってる

この2つの噂が本当ぽくなってきた。

実際に、ぶどうはジョージア人にとってジョージア人の心そのものであり、太古の昔から、水や空気と同等になくてはならないものなのである。野生のぶどうを栽培しはじめ、ワインという飲み物に至らしめたのは他でもないジョージア人。同時に、客人を心からもてなすことと、それに伴い大自然の恵みによるバラエティに富んだ食文化も、太古の昔から脈々と受け継がれてるってんだから、そりゃお招きにあずからないわけがありませんでしょう!

しかしよく喋る。
車に辿り着く10分の間に、どれだけの情報を得たことか。
この建設中のビルは、何のために建設してるか誰も知らんが結局いつも政府が乗っ取るとか、柔道は結構いいセンいってるのにいつも日本に負けるとか、弁護士やって博士号取るのに勉強もして忙しいけど時間がないとは絶対に言わない、友達や家族に呼ばれればいつだって出かけるさとか、この取り留めのない会話でなぜか、この人は大丈夫だと確信を持つに至る。

裏通りにあった変な時計塔…最近できた写真スポット

なにやら、ドライバーと連絡がつかないのかなんなのか、しばらく待たされ、ようやく出発。

トビリシ市内の渋滞で更に焦るBacho(右)

今回、このドライバー付き車代400 GEL(18,000円くらい)は我々の負担。エンドレスに提供されるワインとパンとチーズは全てBacho持ちで、その他ジョージア人にとって大切な、かつ地元の人間しか知らないような場所に連れていってくれると。しかし我々はお客様なので、時間や他に寄りたい場所など希望があれば、なんなりと、とのこと。

高くね?と、念のため相場を調べたら、旅行会社主催のプライベートツアーだと、600 GELはゆうに超える。損にはならないし、個人のお宅にお邪魔できるなんて願ったり叶ったりなので、彼を信頼しておまかせすることとした。

丁度、ポストカードを出したかったので郵便局と、トビリシのはずれに素晴らしいビルがあるので見に行きたいと伝えると、もちろん、問題なし!とのこと。行くのが面倒な所だったので、助かった〜。

が。

車に乗り込んだ途端、「時間押してるから!!

知らんし!我々別に遅刻してないし!

なんかその流れで、そのビルとは絶対逆の方に車が進んでるので、ちょっと遠慮がちに、えーと、あのビルは…と問うも、

「忘れてた!ごめん!が、この渋滞だし戻ったら間に合わないから!明日もトビリシにいるんだし、タクシーで行けばいいんだよ!

 

 

うん。

そうだね。

最初からそのつもりだったし。

今日はきっと1日この調子で、全てBachoのペースでことが進むのであろうね…と顔を見合わせる我々。なんか東南アジアでよくあるなこういうの。

まず到着したのは、ニノツミンダ修道院(Ninotsminda Cathedral)。観光客は来ない所というだけあって、確かに中にいたのは、労苦が表情ににじみ出る老シスターのみ。

ここは特殊な教会で…と説明を受けた所、ここはジョージアに最初にキリスト教をもたらした、カッパドキア出身若干17歳の少女、聖・ニノちゃんを祀る教会らしい。内側に入るともはや廃墟。近年の地震で半壊したらしい。トビリシ市内にも、ドリフのオチ調にいつパカッとぶっ倒れてもおかしくないようなあばら家が沢山ある、というか大半の家がそうだが、ここ、地震あるんですか………?

なんせ先程も申し上げたように、ここはぶどうで出来てる国なので、ニノの伝説にしても、「最初に彼女が見つけたのがぶどうで、その蔓と自らの髪の毛を編んで十字架を作った」とか…どうもなんか無理やり感拭えないが、皆そう思ってるならそれでいいだろう。ぶどうはとにかく宗教的意味合いとしても、ジョージアでは昔からとっても大事なのだ。

消えゆきそうなマリアさんを助けて誰か

年2回のニノの日には、入場制限かかるほどに信者が集うのに、誰も保護に乗り出さないもんだから朽ち果てていくばかりとのこと。

ソリューション→賽銭箱置こう。

少しでも金を落とそうと小さなショップにて、そのニノの歪んだ十字架のネックレスと、小さなニノの肖像画を買った。せかされて車に戻る。

途中、サグレジョという小さな街に寄る。ここにはBachoの両親の家があり、最後にワインと食事をすることになっているらしい。が、彼のいとこが「何やってんの〜?」とWhatsappしてきたらしく、せっかくだから一緒に連れていく、ちっちゃいから大丈夫と、車は裏路地に入っていく。自分らじゃ100%訪れることのない、普通の住宅街。こりゃ、旅行会社主催のワインツアーじゃー経験できないやな。

名前は忘れたが12歳のおとなしそうな少年、確かにちっちゃいので、後部座席中央に格納しても大した変化は無かった。

次に訪れたのはチャイルリ要塞(Chailuri Fortress)

キレイに残ってるもんだなあ

広い広い畑のど真ん中に位置してて、めちゃんこ景色がいい。というのもこの要塞は、カヘティ方面から忍び寄る敵を察知し、トビリシの王様に知らせるという超重要な役目を果たしていたんだとか。

奥に突っ立ってる木がある場所は、井戸。ここに常に水があったから、立てこもりが続いても兵隊たちは生き延びられることができたんだそうだ。水大事。フランスでは飲料水が入手できなかった時にはワインを飲んだというしここでもそれで全然イケるとおもうが、なんせ戦争だからな。酒気帯びはいかん。

お次は、ロードサイドのチーズ店。ここは同時にカヘティ・スタイルの細長いパンも売っているところで、石窯+薪で焼く。トビリシのそれとは風味が違うよとBachoは自信満々。

こっから数百メートル先んところで、焼き立てパン食ってワイン飲もう!と。待ってました〜、いよいよワインツアーらしくなってきた。

道路脇にチーズ積んであるのがチーズ屋さんのしるし

1日中、日がな外のソファに座ってのんびり客を待つおじさん職人。なんだか、東京の会社員生活をしてるとそんな生活想像もできないが、実際そうして暮らしている人がここにいる。異国にきたという実感はこういうところでもあるのだ。

数百メートル先のレストランとか、公園とか、に、行くのかと普通思うじゃんね。

ちょちょとまて。

予想外の展開

Bachoどこ行くの、そこ野菜とか並べて売るところじゃないの、

冷めないうちに早く!と

「カヘティではどこだってピクニックの場所になるんだよ!」

この焼き立てホカホカパンへの熱い情熱ったら…フランス人のバゲット並。

案外もう冷めきってたカヘティ・パンとチーズと自家製赤ワインとともに、お昼ごはん?開始。と思ったらその前に出てきちゃったよ、チャチャ!

土地特有の蒸留酒というのはどこの国のでも恐ろしいものだが、このチャチャも例外ではない。実際にカズベギでも、酒強そうな中年グループがおかしなことになっていたしね!

初体験・ジョージアで大昔から伝承されてきた独自の乾杯の儀式。玉田「タマダ」という宴会の仕切り役(通常はグループの中で一番敬われている人)が、家族、友情、祖国、平和、喜び、愛、など、叙情詩のようなスピーチを述べ、乾杯、そして飲み干す。
飲み干したら今日これから全然楽しくないことになるので勘弁していただくが、男としてトドマンはがんばる。Bachoがアドバイスを送るが

「素早く飲み込んで、パン押し込んで!」

て、全然楽しくなさそうだけど!

味わうな、飲み込め!を遵守する姿

ちびろっくは赤ワインだけでよいです。ここいらの赤はなんもつまみなくてもいけるほど、スッキリしているので楽に飲めてよい。

楽しいランチ?は10分やそこらで終わり、また早よ車に乗れとせかされ次の観光地へ。

しかし次のはなかなか面白かった。

広々とした、設備貧弱な公園のような場所。この時はむさくるしい男たちが集ってカードに興じていた。

なんで外国って暇そうなおっさん多いんだろう

Bachoが子供のころから遊びに来ているという。なんのルールもなさそうなので、BBQもキャンプも無断でできんだろう。ここになにが?ずんずん進んでいくBachoについていくと視界が開け見えたのは

なんかいるなんかいる

なんすかあれは。
Bacho、なんすかあれは。広々と広がる草原のど真ん中、ボロボロのバレーボールのネットの向こうにショーンとそびえるそれは。
もしや、ソ連珍妙建築物か。

「そう、ソビエトが造った…なんかよくわかんないけど16歳くらいのギャルが『イエーイ』ってやってる感じなんじゃないの?誰も何なのか知らん」

ギャルの如く皆かわいくポーズ(子供は冷静)

この巨大な女子高生が、トビリシ市内にあるならまだなじむが、こんな何も無い所に突如現れる、このシチュエーションがとんでもなくシュールだ。

※写真はイメージです

歴史的な事情上、および美しくないということでジョージア人はこの手のソビエト珍妙系を嫌うが、ちびろっくは大好きである。(朝、間に合わないとスキップされた建物もそれ系)Google Mapにすら出ておらず検索しようもないので、Bachoが連れてきてくれなければ一生お目にかかることもなかったであろう、カヘティギャル。

これに続いて、この地方で人気の街、シグナギだとか、前述のニノの墓やらを訪れるも、入って、ガーッと説明されて、写真撮って、撤収!と、音速の貴公子もひっくり返るスピードで引っ張りまわされたため、大して覚えていない。もう最初のニノツミンダとかみたいに、ちゃんと解説を書く気もおきない。

ちょっといい写真撮ろうと思っただけで人生の幕を閉じちゃう人の例

なんか塔みたいなのに登らされたので、こんなどうでもいい写真を撮っていたら、もうBachoの姿はない。

登らされて5分も経たないうちに早く降りろとせかすBacho

唯一印象的だったのは、シグナギの児童公園(よく日本でも街中にあるやつ)が異様な賑わいを見せていたことくらいである。

子供も大人もひしめき合い謎の大盛況

確かにシグナギはキレイな街だが、いかにもな観光地で、取り立てて興味もわかず。もう観光はいいから早くワインを飲もうぜ!

楽しい宴は後半につづく。

 

■■本日の旅情報■■

・観光地 → 全部タダ

・ニノツミンダで買ったクロスのネックレス
4 GEL

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