何度も言うが、ジョージアはワイン発祥の地とされている。

でもジョージアのワインなんて見たことも聞いたこともないぜ!という人が大半だと思うので、ちびろっくが調査&体験したぶどう事情をお伝えする。

ジョージア人とぶどうの関係

なんとまあ、8,000年も前からワインの醸造がはじまったとされており、原生品種は500以上。西は黒海、東はカスピ海、北にはコーカサス山脈がそびえるという自然のオンパレードな環境のおかげで、土に多様性が生まれたおかげのこの数。現在ワイン造りに使われているのはそのうち約50種ほど。よく見られるのはこんな感じ。

白いブドウ
ルカツィテリ(Rkatsiteli)、ムツヴァネ・カフリ (Mtsvane Kakhuri)、 ヒフヴィ(Khikhvi)、キシ(kisi)、カフリ・ムツヴァネ(Kakhuri Mtsvane)、チヌリ(Chinuri)、ゴルリ・ムツヴァネ(Goruli Mtsvane)

赤いブドウ
サペラヴィ(Saperavi)、タヴクヴェリ(Tavkveri)、オツハヌリ・サフェレ(Otskhanuri sapere)、シャヴカピト(Shavkapito)、アレサンドロウリ(Alesandrouli)

そもそもは、野生のぶどうを手なづけて、栽培をいち早く始めたのが、ここいらなのである。パイオニア。

どこら辺に生えてるのかってえと、名産地は東側のカヘティ州。でも山岳地帯以外はだいたい生えてるようで、首都トビリシ市内にすら、ちょこちょこぶどうが生い茂っている。街並みにとても馴染んでいるので、結構気が付かない。

ぶどうの下で立ち話

また、ジョージアが国教と定めているキリスト教では、パンはキリストの肉体であり、ぶどう酒はキリストの血であると認識されている上、ジョージアにキリスト教を広めたニノちゃんのエピソードにも絡んでくる。そう、ぶどうの木になにか感銘を受けた彼女が、自分の髪とからめて十字架を作ったというアレ。

 

気に入ったからぶどうの木の十字架に髪の毛巻いてみた

それに加えて、ジョージア人はおそらく世界で一番、客人を迎えるのが大好きな人種だ。

スプラという独特の晩餐会は現在でもそこかしこで、へたしたら1日ぶっ続けとか、1日に2回とか、繰り広げられているのである。このスプラの乾杯に使われるのはもちろんワイン。

ジョージア人のぶどう愛を感じるエピソードがひとつ。

ジョージアはまあまあ金がない国である。
そこかしこにカジノの看板があるので、あれ観光客向け?と友人に聞くと、ジョージア人もカジノは大好きだと。一攫千金を夢見てオンラインカジノに明け暮れる貧乏人が少なくないという。全体的に切羽詰まった雰囲気がないので、それを聞くまで経済事情なぞ気にしてなかった。

お隣のアゼルバイジャンは、油田でうまいことやったので、ぐーんと金持ち大国にランクアップ。第二のドバイと言われるまでにオイルマネーでギラッギラに。
ジョージアでも石油、とれるんじゃね?という話になり、ようやく貧乏生活から脱出か!という希望が見えたその時にかかった待ったの声。

石油が出てしまえば、自然環境がガラッと変わり、いままでのようにぶどうが採れなくなってしまうという。

ということでオイルマネーをとるか、ぶどうをとるかの国民投票実施。

結果、ぶどうの勝ち!!

ジョージア人は目先の金より、昔から大事にし続けていたぶどうをとった。なんて健気な、愛あふれるエピソードなのでありましょう。

ぶどうはこうしてすんごい昔から現在まで、宗教的にも文化的にもごく当たり前の存在として、ジョージア人とともにあるものなのだ。

 

ジョージアワインの作り方

最近は、他のところと同じようにタンクや樽を使うところも増えているけども、本来のジョージアワインといえばばかでかい土器での発酵!

Qvevri(もしくはKvevri、クヴェヴリ)と呼ばれる、土でできた玉子型のでっかい甕は、マラニというワインセラー(とゆか酒蔵)の地中に頭までスッポリ埋められてその役割を果たす。土に埋めることで1年を通して安定した温度でワインを保てるし、地震の被害も最小限に留められるという。頭いい〜。
また、クヴェヴリは樽のように干渉しないので、あくまでもぶどうの個性が生かされる。

でかいのは、ワイン貯蔵用で4,000リットル級のがあるらしいが、ご家庭では大体500〜700リットル程度のが使い勝手が良い。

なんならこのひと3人くらい入る

ワイン名産地カヘティでは一般家庭でも、日本の夏の麦茶のごとくワインをつくる。んで、ふつうの一般家庭にも当たり前のようにマラニを設置する。というか、家をつくる前にマラニをつくる。さらにその前にまずクヴェヴリを埋める位置を決めるのだが、牛を一晩、候補の地に放ち、彼らが寝た場所で決定。そこが乾燥しているからだそうだ。どこまでも原始的だ…。

家全体の設計のおおもとになるのだから、この牛の判断は非常に重要だが、牛はそんなこと知ったこっちゃない。

地面のマンホールみたいのがクヴェヴリ under the ground

友人宅のマラニには、ワイン、ワインを作った後の果皮とかを蒸留してつくるデンジャラスな酒チャチャ、果物や野菜のコンポート、いろんなもん入れる空き瓶がズラッと並び、天井からはベーコンがむき出しでぶら下がっていた。酒蔵が食料貯蔵庫を兼ねた感じ。

クヴェヴリご開帳

クヴェヴリはワインづくりをおえると、チェリーの樹の皮でつくったモップみたいので洗われる。でかいやつだと人がすっぽり中にはいってゴシゴシやる感じ。他にも何通りもの、オールドスクールなやり方がある。

大昔から伝わるこの手法を超おおまかに説明するとこうなる。

※こちらはカヘティ式。西部のイメレティ州のはまたちょっと違う。

1-1.クヴェヴリ職人は、まず素材となる土を選定して、余計な土が混入しないよう手で掘る

1-2. すんごい手間暇かけてクヴェヴリを焼き上げる。内側に蜜蝋を塗る。

1-3. 屈強な男たち数人がかりで、マラニの地中にクヴェヴリを埋める。

2-1. 足でふみつぶしたぶどう(通常オーガニック栽培)は、白でも赤でも、果皮・果肉・果梗・種全部をひっくるめてクヴェヴリへ投入され、発酵過程へ。(通常白ワインは果汁のみで発酵)

2-2. しばらく炭酸ガスで皮とかが浮いてくるので、時々棒で沈める。

2-3. 30日前後でガスが消え、皮が自然に沈む。赤ワインは果皮と果梗を除き、白ワインはそのままでクヴェヴリにガラスや木の板などで蓋をする。更に乳酸発酵させて酸味を和らげる。

2-4. 乳酸発酵終了後、クヴェヴリに蓋をして石灰とかで密封。あとはお若いお二人だけで…という気持ちで半年くらい完全放置で熟成。通常春ごろに御開帳!

2-5. お好みの感じに仕上がったら、他の保管用クヴェヴリに移すか、瓶に詰めるか、飲む

色も麦茶のようだ

このやり方だと、通常のワインよりアルコールちょい高めの、保存がきく、濃厚で、タンニン多めのワインになる。白ぶどうで作っても、できるワインは白くないので、白ワインではなくアンバー・ワインなどと言われる。オレンジワインともよく言われている。

で、味はどんなかと?イタリア、フランス南部のオレンジワインは、第一印象は杏みたいな熟成した果物→スッと消える感じなのが多かったけど、ジョージアのそれは、華やかさを抑え、能ある鷹は爪を隠すのことわざの如く至極控えめに、己のみずみずしさを滲み出しているような。自然のなせる技!っていう液体が身体にサーと染み渡る感じです。きっとこの説明じゃ伝わらないので、知りたくば飲みましょう。

ぜんぶをひっくるめて醸したこのワインは、抗ガン、抗酸化作用があり、心臓にもいいという。待ってました!酒が身体にいい論!ワインが身体にいいかどうかは賛否両論あるが、ちびろっくは信じる。少なくとも無農薬で育てられたぶどうで、余計なものを加えずにつくられているものなんだもの、適量ならば大丈夫。(実際頭痛とか疲労感とか感じない)

こんな感じで、人間の介入はごくわずかで、ほぼぶどうとクヴェヴリ任せである。ぶどうを一旦自然に戻す、という解釈もできる。ちびろっくはこの、自然を敬い摂理に逆らわず、あくまでも人間は謙虚に見守るやり方がすごく好きだ。ジョージア人はワインに限らず、基本的にこういう気持ちをもって、自然と共存しているように感じる。

こんなキレイな「白」ワインもちゃんとある

このワイン造りの手法は現在も(細々と)引き継がれ、そのワインはしばしば「クヴェヴリワイン」として世に出回っている。最近、スロベニアやイタリア、アルメニア、クロアチアなどで、同じような甕を使うワインメーカーも出てきている。結局行き着く所は、原点なのかもなあ。

そもそもこれがないと何もはじまらない、クヴェヴリ。
これを造るには正しい土と熟練の技が必要で、工場での大量生産はできない。が、今職人不足で、本気でクヴェヴリ文化存続の危機だという。埋めちゃうから、余程のことがなければ壊れることもなく、何世紀も使い続けることができるが、今後クヴェヴリを作る人間がいなくなれば、この文化は途絶えるしかない。そりゃあかん!ということで、ちびろっくは少しでも多くの人にジョージアワインのことを知って、興味をもって、飲んで、クヴェヴリの素晴らしさをわかってもらいたく、こうして地味にアピールをしているわけなのである。

この手法は2013年12月、ユネスコの世界遺産に無形文化遺産として登録された。もっともっと有名になって、クヴェヴリ造りからがっつりと保護していただきたい。

 
さて詳細は

この本に詳しいよ!

んで、どこで飲めるの?いくらなの?

まあ焦りなさんな。ということで実践編につづく。

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