東京にも、いい加減本格的な秋が来ましたね、と書こうとしたが、そういやもう東京アーバンピーポーじゃなかった!都会っ子気取りするところだった。

次の電車まで20分待つとか、スーパーが21時で閉まるとか、野菜は毎週市場で買うとか、近所の人が「雨降ってきましたよ!」と洗濯物の心配をしてくれるとか、2回くらいしかしゃべったことないお隣さんに、「春になったら潮干狩り行こう」と気軽に誘われたり、都心じゃありえない環境と習慣にだんだん心地よく馴染んできたあたりであります。

馴染んだどころか、仕事で毎日東京出てるけど早く東京から脱出したくて仕方なくて、帰りに映画観て帰ろうとか本屋寄っていこうとか朝思っても夜には最早の電車で逗子直帰。もう、東京には、居られない身体になっちまったのかな…。

はい、では、ドイツはもう冬だろうなー。と懐かしみながら、続きをやるとしましょう。

決して長逗留したくはないが、憧れのバウハウス校舎で一夜を明かして気が済んで、いつも通り老人さながらの早い朝を迎える。

静かだ〜

静かだ〜

さて、相当な大金を無くしたことは心の奥底にしまい込んで、バウハウスの街、デッサウを堪能しよう。

校舎と、昨日外観を眺めて終了した、名だたるバウハウス関係者が住んだ、マイスター・ハウスを見たいのだけど、なんせ朝の6時にやってるわけもないので、散歩にでも出ようと思った。

遠いからいいか~と思っていた、川沿いのコーンハウス (Kornhaus)に行ってみよう。ここもバウハウス建築群のうちのひとつで、1920年くらいに建てられて今はレストランになっている。Google先生によると徒歩2~30分というので、お散歩にちょうどよいであろう。

深い森

深い森

森にしか見えない鬱蒼とした公園を抜けると、少し雲行きが怪しくなってきた。傘取りに行くのも面倒だし、降ってきたらどっか入ればいいでしょう。バスやタクシーもあるし。

 

甘かった。

 

待ちなさいそれシロクマじゃ?と日本なら警官に止められそうな、巨大な犬を連れたおばちゃんや、どこに行くのか知らないが何日で着けるんだろうと心配になるほど歩幅の狭いじいちゃんとすれ違いながら、川岸方向へ。

結構中心地

結構中心地

もともと少ない歩行者がいなくなり、家と家の間に空き地というか草原が目立つようになってきた。細長く伸びた草が風にさざめく音が聞こえる。むしろそれしか聞こえない。静かだ。

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家、遠い

いつもこうだ、引き返すのがどうもいやだからどんどん進んでって、京都でもタイの北の果てでも遭難しかかったのに、懲りない。でも今回は最終目的地はレストランなのだから、人間はいるはずなのだ。遭難はしない、大丈夫。だいたい、家があるじゃないか。

賑わった東京を歩く20分と、荒涼とした田舎町を歩く20分の、この時間間隔の違いって何だろう。

なかば意地で、足元の悪い道を突き進んでいくとついに土手が見えてきた。

本当に川のせせらぎしか聞こえない

本当に川のせせらぎしか聞こえない

この遥かなるドナウ…じゃないエレベ川のほとりの、静寂。図らずも訪れるこんな一瞬は、この風景を二度と見ることはないのだ、と、いつになく人をおセンチにする。
興味もないのにガイドブックなぞって見に行く類のものではない、こういう偶然の出会いに、感動って見いだせるもんだよ。

しばしボケーと放心し、気が済んできたあたりで何やらパラパラきやがった。

「来た…か…」

見上げれば隙間なく空一面、グレーの分厚い雲。

いつも肌身離さずもっている折り畳み傘、どうして今に限ってないんだろう。そうだ、マネーベルト探してるときにバッグから出したんだ。そうだ。あはは。

さてどうするか、と、作戦を立てはじめる間もなく、土砂降りに。

ランチとか気持ちいいだろうが

普段だったらあたたかく客を迎えるのだろうが

コーンハウスはお昼からじゃないと開かないし、やっぱり相変わらず人っ子一人いないし、とりあえずコーンハウスの大した幅のない玄関に退避!10分程立ち尽くしてみるも、やむ気配はない。

数十メートル先で、女性が車に乗り込んだが、そこに便乗させてもらう図々しさが足りなかった。コーンハウスはまだ暗かったが、人の気配はある…傘借りようかなあ…とかもやもやしてたらなんとなく雲が晴れてきたので、このタイミングで出発することにした。

一応バス停に寄ってみると

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バスを見かけたら幸運が舞い降りる位の頻度

さ、歩くか…。

さすがデッサウ、そこらじゅう見逃せないお家がボンボン建ってて、雨なんか全く気にもならない!…ほどの小雨ではない。結構しっとりしてきた。

それでも「感じの良いポーチですねえ~」などと感心しきりで写真を撮らせていただく。

ゴミ箱の配置まで計算されてるんじゃ

ゴミ箱の配置まで絶妙ですねえ〜

こんな感じで全くお店どころか民家もシンプルイズベストのモダンスタイルのため、雨宿りできる軒先なんてのもなく、できるだけ木陰を選びつつ、Google先生のお導きで最短ルートを小走り、ようやく「街」に到着…。

滅多に見かけない黒猫まで出てきやがって

滅多に見かけない黒猫まで出てきやがって

びしょ濡れにはならなかったものの、うちの弟並みの免疫力だったら間違いなく風邪引いてたな。姉は強いから大丈夫。
昨日、灼熱ルームに悩んだことが夢のようである。

ようやく、バウハウス校舎とマイスター・ハウスの開館時間。じっくりまったりと堪能したが、詳細は興味のある人だけFlickrとかで見てもらうとしましょう。

Bahausの文字が見えるあたり計算されてる

Bahausの文字が見えるあたり計算されてる

最後に、富豪だったら店ごと買い占め間違いなしの、バウハウス・ショップでお買い物。

危ない危ない

危ない危ない

普段放し飼いの理性を総動員して、今日からの移動が辛くならない程度にバッグやポストカードを購入。レジの店員に何事かを話しかけたのがいけなかったのか、布バッグを1枚、入れ忘れられたことに気付いたのは、ベルリンに向かう電車の中であった。

どこまでも相性の悪いデッサウ、しかし建築、バウハウスの遺したものは、最高だった。

 

得たもの:生バウハウス体験

失ったもの:大金、布バッグ、やる気7割

旅も人生も山あり谷あり。

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