大嫌いなアメリカへ
アメリカは嫌いっす。全然行きたくないっす。
風情ないし、差別すごそうだし、野蛮そうだし、すぐ銃だすし、なんでもでかいし、ハンバーガーばっかだし。だけど待ちに待ったRage against the machineが復活ライブをやると聞くやいなや、「Coachella Valley Music and Arts Festival」のチケットを取りアメリカ行き決定。わくわく6割、いやいや4割で飛び立ったはいいが…
LAで路頭に迷う
車ないと住めない
「誇り高く、我らの旗を掲げよう!」
といううたい文句で機内通販雑誌で堂々販売されていた、星条旗掲揚パーツなどで大笑いしながら、なんとなくLA国際空港に到着。ものすごい距離を移動してきたし、アジアから出るのはこれが初めてだが、本当になんとなくだ。一生のうち、来ることになるとは思っていなかった土地なので、なんだか自分がここにいる意味がよくわからず戸惑うが、イミグレで人当たりの悪すぎるババアに、「何しに来た?」「ホテルはどこ?」「(首にスカーフ巻いてるのを見て)寒いのか?」と、質問というか尋問されて、あ、そうだユナイテッド・ステイツにレイジ見に来たのだ、と思い出す。
街に出ると整然と並ぶヤシの木、青い空、乾いた空気、殺伐とした建物…ここは本当に人気の観光地なんですか?しかもほのかに匂う、この空虚な空気は何ですか?想像どおりの乾いた風景に違和感を覚え、なじめず、想像以上のアウェー感に苛まれる。
レンタカーで車を手配したはいいが途中、フリーウェイを降り間違い、どの窓にも鉄格子がはまりまくり、歩く人皆無の確実に危険なエリアにうっかり進入!「地図しまって!ロックかかってる?!」と軽いパニックに陥るも、無事脱出。ダウンタウン外れにある、中国人経営の宿にたどり着き、別に愛想がよくも悪くもない中国男性と言葉を交わすと、その胡麻油な風貌にやはりやすらぎを感じた。
着いて数時間にしてバタ臭さに疲れ、早くもちょっと帰りたい。中華が食いたい。そして隣からのハレンチサウンドでトドマン眠れず。
大丈夫か?この旅。
バケツ入りアイス。翌日朝早くから、ここから車で3時間くらいの砂漠地帯へ向かうので、必要そうなものをスーパーで購入。母の日の何のしかけもないカードが6ドルもしたりと案外物価は高いし、なにもかもがバカみたいにでかいので困惑するが、とりあえずシリアルバーなど保存のききそうなものを買い込む。サラダなんか誰も買わないらしく、すっかりレタスがまっ茶色なのに、シリアルなど健康食品は充実している。違うぞ。なんか根本的に違うぞ。
買い物ののち、ヒスパニックばかりのビジネス街を散歩するが、投げやりな空気ただようコンクリートジャングルはなんにも面白くないので、ごはんを食べてとっとと宿へ帰還。我らの宿は、いかにもモ〜テル〜て感じの軽くて安っぽいネオンがきらめいていて、それは気にいった。何を考えてデザインされたのか、変な柄のカーテンも、部屋の前に居座る巨大なゴミ箱も、ロードムービーの世界だ!やっとちょっと、わくわくしてきた。
これが、今まで無条件に否定しつづけてきたアメリカでの1日目。
東京ドームに換算すると星の数くらいになるであろうこの国のうちの、たった2ブロックくらいしか見ていないが、第一印象はさびれたテーマパーク。それとかくさしゃかい。もう感じちゃった。かくさ。
大丈夫か?この国。
そしてIndioへ
鳥がよく巻き込まれる風車アメリカでの車の運転は、比較的すぐ慣れるそうだ。道は広いし、ドライバーはマナーがよいし、車社会だけあってドライブ環境は整っているらしい。でっかいトレーラーを転がすレイバンの粗野なおっさんに、「Heyジャップ!国に帰ってママの乳でも飲んでな!」と卑猥なジェスチャーで煽られたりする、ということもない。だがたたみかけるように分岐点トラップが多いのでそこは要注意だ。
道路脇にはモーテルやデニーズの看板がちらほらあって、本当に映画で見るアメリカのハイウェイそのまま。何もかもそのまますぎて、USJのアトラクション体験中みたいな、いまだにアメリカに来たという実感がない。変な気持ちだ。
不毛の地2時間も走ると、Palm Springsという高級家族が暇さえありゃ遊びにくるというリゾート地に到着する。
←リゾート地?
気違いじみた色とサイズのケーキを売るスーパーと、ゴルフ場と、豪邸がポツポツ建つ「リゾート地」は、なんでこんな草木も育たないような砂漠地帯にあるのだ。どうしてなんだ。どうしてここでくつろごうとなんて思うのだ。
リゾート、息抜きの場といえば緑か水があるところ、というのが当たり前だと思っていたが、こんなにカラッカラでもリゾート地になりえるのだ。世界は広い。
その砂漠娯楽地帯の少し先に、目的地Indioがある。ここのポロ競技場が、今回の音楽フェス開催地。しかし暑い。と思ったらこの炎天下のドライブ中、エアコン効いてなかった。おい。
皆裸。かくして我々は、レイジ復活の地に無事たどりついたのであった。
キャンプサイト入り口にて、あ、こりゃ牛骨粉とか騒ぎになるわとしみじみ実感のほぼノーチェックな荷物チェックを終えて、おニューのテントをはり、気持ちは落ち着いた。
同じフェス会場でもフジロックとはまったく異なり、地面はどこまでも真っ平ら、雲一つない乾ききった大地、人口密度の低さ。
あっち〜な〜、日焼けしちゃうな〜、でも快晴のフェスっていいな〜。しかし、のんきにぶつぶつ言っていられるのもここまでであった。
我々外国人はチケットの引き換えのため、40度をゆうに超える日陰のない灼熱地獄の中、4時間も並ばされたのだ。
この後、4時間実際どれだけの人間が並んでいるのかもはっきりわかんないし10分に数歩進むか進まないかでもうこの先にチケット引換所なんてほんとはないんじゃないか?と疑念を持ちたくもなる状況だがとはいえ中に入るには待つ以外、選択の余地はないのだ。
日差しは容赦なくかわいそうな我々を焼き、陽気だった周囲の人間のテンションもやがて下がりきり、ラテン系カワイコちゃんはチケット引き換えまであと少しのところで倒れ込む…。カオスだ。ケイオスだ。ゲルニカだ。
緊急措置として大量のミネラルウォーターのボトルが運ばれ、前の人間が後方へ投げまくる。今までの旅行中、欧米の人間はあーだこーだと注文が多くてうるさいイメージがあったが、こんなにのっぴきならない状況のなか、皆ムダにカリカリすることもなくお互い助け合っている。余分な体力は使わない合理性、愚痴を言ってもどうなるわけでもないという楽観性…これは見習うべきと感心するが、あっ、はたまたこれは、アメリカという国に一致団結して立ち向かおうという気持ちの表れなのか?そんなわけないだろ。わけないかなあ。とにかくチケット販売元のTicket Masterはクソだ。
で、結局のところチケットカウンターはちゃんとあって、引き換えもすんだ。しょっぱな超えるべきハードルが高いと、後は楽だ。海外って、なんかいろいろ思いもよらぬことがあるなあ。日本はきちんとした国なんだなあ。なんて謙虚にとらえていたら、帰国後クソTicket Masterから突然メールがきた。
「このたびは迷惑かけてごめんね。来年のコーチェラのチケットタダにします。」
なんと大胆なお詫び!!!そそうもアイスもでかいが、お詫びもでかい!!ありがたく申し込んだが、結局2008年はアメリカに飛ぶほど魅力的なメンツではなかったため(このお詫びに金かかったからか?)、辞退することとなりました。でも、思い切りのよさに見直したわ。